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高知市 鏡

竹細工作家 下本一歩

Shape of Bamboo
ARTIST
Kazuho Shimomoto

この場所で暮らすこと

高知市の中心部を流れる鏡川。この川を車で30分走ると山間の集落にたどり着きます。聞こえてくるのは鳥のさえずりと清流から聞こえる川の音。春は谷間をぬける風に木々が揺れ、山々は山桜が色づきます。ここは高知市鏡地区旧鏡村。手のひらを広げたようにいくつもの渓谷が奥へと続きます。そんな人里離れた山間の場所で地元の「竹」でカトラリーを作る作家下本一歩さんの工房を訪ねました。

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竹は日本各地に分布していて昔から暮らしの中で様々なものに利用されてきた木材です。しかし、高度経済成長期にプラスチックなどの代替え材料などが使われるようになってから竹は使われなくなり管理不足で侵食し整備をする人の高齢化や人手不足で日本各地の竹林はひどく荒れています。ここ高知県でも竹の害は深刻で管理不足でひどく荒れているのを目にします。この管理不足で荒れていく竹林。下本さんはこの竹林で新たな価値を見出し作品を制作しています。

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そこに竹があったから竹細工をはじめた。
「木で作っても良かったんやけど木って癖があるんです。節があったり繊維が入り組んでいたりとか曲がっていたりとか。でも竹って真っ直ぐやし制約もあるけれど自分のデザインをそのまま形にできるので自分に合ってたという感じかな。結構カチッとデザインしたいタイプなので木だとちょっと癖がありすぎて味とかにはなるのかも知れないけれど自分は竹の方が好きでした。」

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この場所は下本さんの祖父母の田んぼがあった場所。高知市内で育った下本さんは子供の頃に毎年ここ鏡村に帰ってきては農作業を手伝っていた思い出があるそうです。そして大人になって鏡村に移り住んだ友人宅へ遊びに行った時にあらためてこの場所の良さに気がついたといいます。

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炭を焼く生活からはじまた創作活動
「最初、炭窯作りのワークショップへ参加した時に。そこにある石とか土とか木とかその場所にあるものを使って窯も作って道具も作ってそういうのが単純にすごいと思ったんです。」

「炭窯は自分で作りました。一人ではとても作れないので手伝ってもらいましたけどね。最初はバーベキューなどで使う炭をここで焼いていたんです。それでここで火の番をしていたら暇なんで。竹でいろいろスプーンを削ってみたりしていたんです。煙突のところに吊り下げてみたりとかこの窯で燻していろいろ試してたんです。生の竹やったらすぐカビがいくし使えないので木酢酢で茹でてみたりとかいろいろ試行錯誤してました。それで今のスタイルに行き着いたという感じですね、だから作家になるつもりで作ってたわけではないんです。」

下本さんが炭を焼きはじめたのは23歳の頃。ある時、炭を下ろしていたお店で削った作品の展示会をすることになりました。その展示会がきっかけとなって下本さんの作品は評判が広がります。そして作家の道へと進みます。

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竹は周辺の山から切り出します。今切り出している竹林は昔は棚田があった場所。「もともとはどっかに少しちょこっと植えただけやと思うんやけど、どんどん増えて…。だけど山の斜面とは違ってここは平やから作業がすごくしやすいです。あと3回くらいはここで切り出せそうですね。」

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切り出した竹は均等に切り分け、炭窯で燻します。燻した竹は乾燥させてデザインしやすい大きさに細かく材料を切り分けます。竹の節を生かしデザインした形に繊細に削り込んでいきます。下本さんのカトラリーは手に馴染み、素朴でありながら気品のある雰囲気を醸し出しています。

暮らしの中の「循環」
下本さんの暮らしを見るとすべてがうまく循環していてその暮らしがとても美しく感じます。木槌や作業台、椅子など道具はできる限り周辺の木を利用し、削ったカスは山に戻せば自然に変える。冬場は薪ストーブの燃料にも使用します。そして、周辺の山に入り竹を切ることで荒れていく山を維持管理することにも繋がる。


「ただ、気持ちいいなって思う感じかな。そんなになんか地球のためにとかそう言うのじゃなくてなんか気持ちいいやん。川が流れててその水をもらってお風呂入って流れていくみたいな。なんか単純に気持ちいいというかそう言うのがゴミが出ないっていうのがね。でも完璧には出来んけどね。」

「仕事してても気持ちがいいと言うかすごい削った山が出てくるんやけど、カスとかそう言うの全部山へ捨てれるしそのまま土に帰ってくれるし、暖もとれるし燃料にもなるし良いことばっかりやしね。」

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この場所で暮らすこと
「自分がぐいぐい行くタイプではないのでなんでこういう生活ができているのか不思議なんやけど、こういうのが良いなっていうのはしっかりあったんやけど、でも、ちゃんと仕事にしたいっていうのはすごい思っていましたね。この場所で。お金稼いで生活できるような形を作りたいっていうのは今でも思いますね。なんか、ただこう言うのが良いみたいな感じじゃなくてちゃんとした仕事とした形にしたいっていうのは思っていましたね。」

「だって、竹ってすごい資源やで、幾らでもあるし、切ったらみんな喜んでくれるしね。」

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飾らず、何者にもならない。

ただ与えられたものをポジティブに受け入れ、自分自身に合わせる。

暮らしの美しさはそういうシンプルなものから生まれてくるのかもしれません。

下本一歩さんの作品(カトラリーなど)は

オンラインショップ  7 days laatikko で販売しております。

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